コラム
2026/08/31 2026/08/21

時効援用とは?借金の消滅時効を主張する要件と手続きを解説

「何年も前に借りたお金について、突然、業者から請求書が届いた」「もう時効になっているはずなのに、支払わなければいけないのだろうか」とお悩みではありませんか?

借金には消滅時効の制度があり、一定期間が経過すれば、支払義務が消滅する可能性があります。しかし、時効期間が過ぎているというだけでは足りず、「時効の援用」という手続きを行わなければ、法律上その効果は生じません。

本記事では、消滅時効の期間と、時効援用の要件・手続きについて解説します。

消滅時効の期間と起算点

債権は、原則として10年間行使しないときは消滅するとされてきましたが(改正前民法167条1項)、現在の民法(令和2年4月1日施行の改正民法)では、消滅時効の期間について次のように定められています。

  • 主観的起算点(債権者が権利を行使することができることを知った時)から5年間(民法166条1項1号)
  • 客観的起算点(権利を行使することができる時)から10年間(民法166条1項2号)

貸金債権のように、通常は債権者が権利発生を認識しているケースでは、主観的起算点と客観的起算点は一致することが多く、実務上は5年で時効期間が経過すると考えられる場合が少なくありません。

なお、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については特則が設けられており、客観的起算点による時効期間が10年から20年に延長されています(民法167条)。

時効は「援用」しなければ効果が生じません

ここで重要なのが「時効の援用」です。時効の援用とは、時効による権利の取得・義務の消滅という利益を受けるという意思の表明をいいます。民法は、時効の完成により権利が消滅すると規定する一方で(民法166条)、当事者が援用をしなければ裁判所は時効によって裁判をすることができないと規定しており(民法145条)、時効が完成しても、権利の取得・義務の消滅という利益を受けるかどうかは、当事者の意思に委ねられています。

つまり、時効期間が過ぎているだけでは自動的に借金が消えるわけではなく、「時効を援用します」という意思表示を、債権者に対して明確に行う必要があるのです。判例・通説は、時効による権利の取得又は消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生じるものではなく、完成した時効の援用がされたときにはじめて実体法上確定的に生じると解しています(停止条件説)。

時効援用の方法・タイミング

時効の援用は誰でも行えるわけではなく、「当事者」のみが行うことができます(民法145条)。この「当事者」について、民法145条は括弧書きで「保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む」と規定しており、保証人・物上保証人・第三取得者は条文上明記されています。これらに該当しない法的地位について「正当な利益を有する者」にあたるかどうかは、問題となる法的地位ごとに判例の集積により個別に判断されています。主債務者だけでなく、保証人など、時効により直接利益を受ける立場の人も、独自に時効を援用することができます。

時効の援用は、裁判上の意思表示のみならず、裁判外の意思表示によっても行うことができます。実務上は、後日の証拠を残す観点から、配達証明付きの内容証明郵便によって時効援用の通知を送付する方法がよく用いられます。もっとも、裁判外で時効を援用した場合でも、裁判において時効の効果発生を主張する当事者は、援用した事実を裁判上主張・立証する必要がありますので注意が必要です。時効の援用は、時効が完成した以降であればいつでも行うことができますが、訴訟においては事実審の口頭弁論終結時までに援用の事実を主張しなければなりません。

複数の援用権者がいる場合の注意点

複数の援用権者がいる場合、各援用権者は独自に時効を援用することができ、援用権者のうちの一人が時効を援用した場合でも、その援用した時効の効果は、他の援用権者には及びません。たとえば、主債務者と保証人がいる場合、主債務者が時効を援用しても、保証人が別途、自ら時効を援用しなければ、保証人との関係では時効の効果は生じないことになります。

時効援用の前に確認すべきこと

  • 最後の返済日や借入日から、実際に時効期間が経過しているか
  • 訴訟の提起や支払督促など、時効の完成が猶予・更新される事由が生じていないか
  • 一部でも支払いをしてしまうと、債務を承認したとみなされ時効の主張ができなくなる可能性があること

時効の完成猶予・更新の制度により、時効期間が経過したように見えても、実際には時効が完成していないケースもあります。安易に「もう時効のはずだ」と判断して対応すると、かえって不利な結果を招くこともあるため、時効援用の可否は慎重に確認する必要があります。

時効援用は早めのご相談をお勧めします

次のような場合は、早めに弁護士へご相談ください。

  • 何年も前の借金について、突然請求書や督促状が届いた場合
  • 時効が成立しているかどうか自分で判断できない場合
  • 時効援用通知の内容証明郵便を送りたい場合
  • 債権者から訴訟を起こされた場合

福岡市西部・糸島地域で法律相談をご検討中の方へ

わかさ法律事務所では、福岡市西部・糸島地域を中心に、時効援用をはじめとする一般民事のご相談を数多くお受けしています。

代表弁護士である私は、独立開業前に国内有数の大手法律事務所において、多岐にわたる案件を担当してまいりました。

その経験を活かし、古い借金の請求にお悩みの方に寄り添い、時効援用の可否から手続きまでサポートいたします。

まとめ|時効期間の経過だけでなく「援用」の手続きが必要です

消滅時効は、期間が経過しただけでは効果が生じず、当事者が「援用」の意思表示をして初めて確定的に権利が消滅します。時効期間の起算点や、完成猶予・更新の有無の確認には専門的な判断が必要となる場面も多くあります。

時効援用でお悩みの際は、お一人で抱え込まず、まずはお気軽に当事務所までご相談ください。

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