コラム
2026/09/28 2026/08/21

共同親権導入後の「親権」はどう決まる?知っておきたいポイントを詳しく解説

「離婚するにあたって、子どもの親権をどうすればよいのか」とお悩みではありませんか?

親権は夫婦間の話し合いで決まらない場合も多く、「相手より収入が少ないと親権は取れないのか」「子どもと離れて暮らしているが不利になるのか」といった不安を抱える方も少なくありません。さらに、令和8年4月1日、離婚後も父母双方が親権者となる「共同親権」を選択できるようにする改正民法が施行されたことで、「単独親権と共同親権のどちらになるのか」「共同親権になったら普段の子育てはどう進めればよいのか」といった新たな疑問を持つ方も増えています。

本記事では、改正後の民法を踏まえ、親権者がどのように決まるのか、共同親権と単独親権はどのような基準で決まるのか、共同親権になった場合に親権をどのように行使するのか、そして親権をめぐる話し合いに向けて準備しておきたいことについて、詳しく解説します。

令和8年4月の民法改正で「共同親権」が導入されました

令和6年5月に成立した民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)は、令和8年4月1日に施行されました。この改正により、離婚後の親権について、従来の「父母の一方のみが親権者となる単独親権」に加えて、「父母の双方が親権者となる共同親権」を選択できるようになりました。

改正前は、協議離婚をする場合も裁判上の離婚をする場合も、離婚後は父母のどちらか一方のみが親権者となることが前提とされていました。改正後は、父母の協議または裁判所の判断により、双方を親権者とするか、一方のみを親権者とするかを選ぶ仕組みに変わっています。以下では、改正後の条文に沿って、親権者の決め方を具体的に見ていきます。

親権者はどのように決まるのか

親権者の決め方は、離婚の方法によって異なります。改正後の民法819条は、次のとおり定めています。

  • 協議離婚の場合:父母が話し合いで離婚するときは、その協議で、父母の双方又は一方を親権者と定めます(民法819条1項)。未成年の子がいる場合は、双方を親権者とするか一方のみを親権者とするかを離婚届に記載しなければなりません。
  • 裁判上の離婚の場合:話し合いで決まらず離婚訴訟に至った場合は、裁判所が、申立ての有無にかかわらず職権で、父母の双方又は一方を親権者と定めます(民法819条2項)。
  • 子の出生前に父母が離婚した場合:親権は原則として母が行いますが、子の出生後に父母の協議で、双方又は父を親権者と定めることもできます(民法819条3項)。
  • 父が認知した子の場合:親権は原則として母が行いますが、父母の協議で、双方又は父を親権者と定めることもできます(民法819条4項)。

これらの協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所が、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができます(民法819条5項)。また、離婚後に事情が変わった場合は、子の利益のため必要があると認められるときに限り、子又はその親族の請求によって、家庭裁判所が親権者を変更することもできます(民法819条6項)。

共同親権と単独親権、どちらになるかの判断基準

父母の双方を親権者とするか、一方のみを親権者とするかは、当事者の希望だけで自由に選べるわけではありません。裁判所が関与する場合、民法819条7項は、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないと定めています。

そのうえで、次のいずれかに該当するときその他の事情により、父母の双方を親権者と定めることが子の利益を害すると認められる場合は、父母の一方のみを親権者と定めなければならないとされています(民法819条7項各号)。

  • 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき
  • 父母の一方が他の一方から身体的暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(暴力等)を受けるおそれの有無や、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき

つまり、DVや虐待のおそれがある場合や、父母の関係性から共同での意思決定が現実的に難しいと判断される場合には、共同親権ではなく単独親権が選択されることになります。法務省の解説資料においても、共同親権と単独親権のいずれかが一般的に認められやすいという関係にあるわけではなく、個別具体的な事情に即して、子の利益の観点から最善の判断をすべきものとされています。

実務上、裁判所や当事者間の判断では、次のような要素も総合的に考慮されるとされています。

  • 監護の継続性(現状尊重の原則):現実に子を監護している親による養育を継続することが子の安定につながるとされる
  • 主たる監護者:これまで主体的に子の世話をしてきた親であるかどうか
  • 子の意思:子の年齢が上がるほど重視され、15歳以上の子については、親権者の指定についての裁判をするに当たり、裁判所がその陳述を聴かなければならないとされています(人事訴訟法32条4項)
  • きょうだい不分離:きょうだいを分離しないことが望ましいとされる
  • 他方の親との関係に対する姿勢:面会交流(父又は母と子との交流)に協力的かどうかも考慮される要素の一つとされる
  • 監護開始の態様:一方的な子の連れ去りなど、監護開始の経緯に違法性がなかったか

かつては「母性優先の原則」が強調される傾向もありましたが、近年はこれを絶対的な基準とせず、上記の諸要素を総合的に考慮する運用が一般的とされています。

共同親権になった場合、親権はどのように行使するのか

共同親権になったからといって、日々のあらゆる場面で父母双方の合意が必要になるわけではありません。民法824条の2は、親権の行使方法について、次のとおり定めています。

親権は父母が共同して行うのが原則ですが(民法824条の2第1項本文)、次の場合には一方が単独で行うことができます。

  • 一方のみが親権者であるとき(同項1号)
  • 他の一方が親権を行うことができないとき(同項2号)
  • 子の利益のため急迫の事情があるとき(同項3号)

さらに、父母の双方が親権者である場合でも、「監護及び教育に関する日常の行為」については、単独で親権を行使することができます(民法824条の2第2項)。法務省の解説資料によれば、これは日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子に重大な影響を与えないものを指し、次のような行為が例として挙げられています。

  • 食事や服装の決定
  • 短期間の観光目的での旅行
  • 心身に重大な影響を与えない医療行為の決定(通常のワクチン接種を含む)
  • 習い事
  • 高校生の放課後のアルバイトの許可

なお、日常の行為を単独で行えるのは、子と同居している親に限られません。子と別居している親権者も、親子交流の機会などに実際に子の世話をする場面では、日常の行為に係る親権を単独で行使できるとされています。

一方で、次のような事項は「日常の行為」に当たらず、原則として父母双方の合意(共同行使)が必要とされています。

  • 子の転居
  • 進路に影響する進学先の決定(高校に進学せず就職するなどの判断を含む)
  • 心身に重大な影響を与える医療行為の決定
  • 財産の管理(子名義の預金口座の開設など)

また、「子の利益のため急迫の事情があるとき」(民法824条の2第1項3号)に該当する場合は、日常の行為に当たらない事項であっても、一方が単独で親権を行使できます。法務省の解説資料は、DVや虐待から避難する必要がある場合(子の転居を含む)、子に緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合、入学試験の結果発表後に入学手続の期限が迫っている場合などを例に挙げています。DVや虐待からの避難については、加害行為が現に行われている時やその直後だけでなく、加害行為が行われていない間も急迫の事情が認められる状態が継続し得るとされています。

共同で決めるべき特定の事項について父母間の協議が調わない場合は、子の利益のため必要があると認められるときに限り、家庭裁判所が、父又は母の請求により、その事項について一方が単独で親権を行使できる旨を定めることができます(民法824条の2第3項)。

改正前に離婚された方への影響(経過措置)

すでに離婚が成立し、父母の一方を親権者と定めている方については、改正法の施行によって自動的に共同親権に変更されるわけではありません。もっとも、施行後、子又はその親族の請求により、子の利益のため必要があると認められるときは、家庭裁判所が親権者を変更することができます(民法819条6項)。共同親権への変更を希望する場合、あるいは現在の親権のあり方を見直したい場合は、それぞれの事情に応じた検討が必要になりますので、弁護士にご相談ください。

親権者となるために準備しておきたいこと

上記の考慮要素を踏まえると、親権(共同親権を含みます)を得るため、また共同親権になった場合に適切に対応するためには、次のような点を意識しておくことが役立ちます。

  • 別居時から一貫して子を監護し、生活の安定を維持すること
  • 子の生活環境(住居・学校等)をできる限り変えずに整えること
  • 相手方との面会交流(親子交流)について、頭ごなしに拒否するのではなく、子の利益を踏まえた対応をすること
  • 子の年齢に応じて、子自身の意思を尊重する姿勢を示すこと
  • 共同親権となる可能性を見据え、進学先の決定や転居、重大な医療行為など父母双方の合意が必要となる「重要事項」と、日常的に単独で判断できる事項とを整理し、相手方との連絡・合意形成の方法をあらかじめ話し合っておくこと
  • 共同親権を選択する場合は、離婚協議書や公正証書に、日常の行為の範囲や重要事項の決定方法、連絡手段などをできるだけ具体的に定めておくこと

収入の多寡だけで親権の帰趨が決まるわけではなく、養育費や婚姻費用によって経済面を補う制度が別に用意されている点も踏まえ、監護の実態や子の利益を中心に考えることが重要です。

なお、令和8年4月の同じ改正により、養育費についての取り決めがないまま離婚した場合のセーフティネットとして「法定養育費」制度も新設されています(民法766条の3)。父母が養育費の分担について取り決めをせずに協議離婚した場合でも、離婚時から引き続き子を主として監護する親は、相手方に対し、離婚の日から取り決めの成立・審判の確定・子の成年到達のいずれか早い日までの間、法務省令で定める算定方法による標準的な額の養育費の支払を請求できます。ただし、相手方が支払能力を欠くこと、又は支払により生活が著しく窮迫することを証明したときは、その全部又は一部の支払を拒むことができます。取り決めをしないまま離婚に至った場合でも、一定の経済的な支えが法律上用意されている点は押さえておくとよいでしょう。

親権について話し合う前に弁護士へご相談ください

親権をめぐる話し合いは、進め方を誤ると感情的な対立が深まりやすい分野です。共同親権制度の導入により、単独親権か共同親権かの選択に加え、共同親権となった場合の重要事項の決め方や日常の行為の範囲についても、あらかじめ整理しておく必要が生じています。次のような段階で弁護士へ相談することをお勧めします。

  • 別居を検討し始めた時点
  • 相手方と親権について話し合いを始める前
  • 共同親権とするか単独親権とするか、方針に迷っている時点
  • 調停・訴訟に移行するかどうかを検討する段階

早期に相談することで、監護実績の作り方や交渉の進め方、共同親権となった場合の取り決め方について、見通しを持って対応できるようになります。

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まとめ|親権は子の利益を中心とした総合判断です

令和8年4月の民法改正により、離婚後の親権は、父母双方が親権者となる共同親権と、父母の一方のみが親権者となる単独親権のいずれかを選ぶ制度になりました。どちらになるかは、子の利益を最優先に、父母と子の関係、父母間の関係、DVや虐待のおそれの有無など一切の事情を考慮して判断されます。共同親権になった場合も、日常の行為は単独で行え、進学先の決定や転居など子に重大な影響を与える事項のみ父母双方の合意が必要になるなど、実務上のルールが細かく定められています。

親権者の判断は、監護の継続性や子の意思など複数の要素を総合的に考慮して行われます。収入の多さだけで決まるものではないため、監護の実態を積み重ね、子の利益を第一に考えた対応をすることが重要です。

親権でお悩みの際は、お一人で抱え込まず、まずはお気軽に当事務所までご相談ください。

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